初日があけた翌朝に語る、快快のこれまでとこれからのこと。

聞き手:橋本倫史(もふ)

橋本倫史

快快として2年半ぶりとなる新作本公演『ルイ・ルイ』、昨日が初日でした。一晩経ってみて、いかがでしたか?

山崎皓司
山崎皓司

ずっと「どうなっちゃうんだろう」と思ってたから、とりあえずはホッとするよね。

加藤和也
加藤和也

ほんとは日曜が初日だったけど、台風で中止になって。台風で公演が中止になるのは初めてだったよね。

山崎皓司
山崎皓司

昨日、高野しのぶさん(現代演劇ウォッチャー)が観にきてくれたんだけど、ツイッターに「山崎皓司さんと出会えた人生を喜べる!」と書いてくれて。出会えたってだけで喜んでくれるのは嬉しいなと思ったし、「それそれ」と思ったんだよね。だから皆、会いにきてよって思ってる。

北川陽子
北川陽子

ね。会いにきてほしい。

佐々木文美
佐々木文美

劇場まできてくれないと、絶対観ることができないからさ。観てもらえないと、その人の中でなかったことになるから。

山崎皓司
山崎皓司

今日の公演は、同じマンションの人が観にきてくれるんだよね。

野上絹代
野上絹代

「今度公演があります」って宣伝したの?

山崎皓司
山崎皓司

うん。前から「観たい」と言ってくれてたから、彼女と観にきてくれる。

野上絹代
野上絹代

こーじはすぐに同じマンションの人と仲良くなって、すごいよね。

北川陽子
北川陽子

そうだね。なかなかないよ、それ。なんでできるんだろう?

山崎皓司
山崎皓司

俺、そこらへんをウロウロしてることが多いから、よく顔を合わせるんだよね。

野上絹代
野上絹代

そっか。勝手に種を蒔いたりしてるもんね(笑)

「演劇とは真逆にあるラジオを扱うことで、もう一度演劇を考える」(野上)

橋本倫史

観客に配られる当日パンフレットには、「ラジオを変えようとしないでください。そのままで。/この電波はわれわれによって完全にジャックされました。/あなたにこの放送を届けるために」という言葉が記されています。作品の中にもラジオは登場しますが、このラジオというモチーフは早い段階で決まっていたんですか?

北川陽子
北川陽子

ポテトタイム(2018年から、山崎と佐々木を中心に不定期で始めたラジオ)はやってたけど、ラジオって要素を『ルイ・ルイ』に入れるかどうかはわりと最近まで迷ってたかな。

野上絹代
野上絹代

でも、ポテトタイムを始めたときにはもう、「ラジオって使えるんじゃない?」とは話してたよね。演劇の公演は一定の期間で終わっちゃうけど、お客さんが定期的に立ち寄れる場所があったらいいよねと話してるなかで、「ラジオがいいんじゃない?」って始めたんじゃなかったっけ?

山崎皓司
山崎皓司

あやみさんが独断で「ラジオを始めよう」と言い出したときは、なんでラジオなのか、俺は全然理解できてなかったんだけど、「内輪受け」みたいなことを言われたときに、「内輪受けってなによ」「逆に皆を内輪にしちゃおう」って話になったんだよね。だから、俺が舞台に出てきたら、「この人は最近狩猟を始めて、養蜂もやってみたいと思っていて、こんな考えの持ち主だ」ということをお客さんが知ってくれてるのもいいんじゃないのっていう、そういう理解で俺はポテトタイムをやってたんだけど。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

昨日はKAATの小沼知子さんも観てくれたんだけど、「それぞれのパーソナリティを知っている状態で観ている人もいれば、全然知らずに観ている人もいて、人によって見えているものが違う」と話してくれて。知ってて観るのもいいけど、まったく知らずに観るのも面白い、って。たしかに、こーじがどんな人か知らずに観たほうが、ちょっと魔法っぽいよね。

野上絹代
野上絹代

城崎国際アートセンターでアーティスト・イン・レジデンスをしたときに、「ラジオと演劇は真逆の媒体なんじゃないか」って話になったんだよね。ラジオは遠くにいる人の生活にすっと入るようなものだけど、演劇は「集まれー!」って呼びかけて、「はい、観て!」ってドーンとやる。演劇とは真逆にあるラジオを扱ってみることで、もう一度演劇を考えることになるのでは、という話になった気がする

北川陽子
北川陽子

そうだ。そうだった。

橋本倫史

ある意味では演劇をとらえなおす作業でもあったわけですね。その作業を通じて、変わってきた部分はありますか?

北川陽子
北川陽子

演劇はやっぱり演劇だなっていうのはあるなって。やっぱり、お客さんにきてもらわなきゃできないことだし、公演をずーっとやれればいいんだけど、やっぱりそれはできないっていうところもあって、それがいいところでもあるっていう。

野上絹代
野上絹代

ラジオって、音楽とかも流れるけど、基本的には言葉で伝える媒体で。今回の台本には「言葉じゃ言い表せない」みたいなテキストも結構出てくるけど、演劇には舞台美術や衣装や照明もあって、目で楽しむものでもある。だから、ラジオっていう要素は使いつつも、そっちの方向に振れたんだなと。いつもだったらもうちょっとべらべらしゃべってたかもしれないけど、ほんとに削ぎ落とした言葉だけをしゃべってる感じはある。今回の公演は、ラジオで聴いたら何が何だかわかんないもんね。突然しゅこしゅこしゅこしゅこって音が聴こえきて、一体何が行われているんだっていう(笑)

大道寺梨乃
大道寺梨乃

それはちょっと聴いてみたいけどね(笑)

「最後に盛り上がって終わるっていうのは、ちょっともういいかなって」(北川)

橋本倫史

前に快快の皆が集まって座談会をしたのは、2012年、メンバーが脱退したり一旦休止したりする直前に、CINRA.NETに掲載された座談会ですよね。あれからずいぶん時間が経ちましたけど、自分たちの現在地点というのはどう感じてますか?

佐々木文美
佐々木文美

2012年って、7年前だ。小学生だったら卒業してる。

山崎皓司
山崎皓司

そう思うと、何かがすごく変わってるはずだね。今回の公演が始まってみて思ったのは、「そういえば俺、快快で久しく演技をしてないな」と思ったの。何て言うんだろう、梨乃さんとか絹代さんがやっているような演技。今の体制になってから、照れちゃって、自分でシリアスなシーンを持ってくることはなくなったんだなと思った。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

照れてんだ?

山崎皓司
山崎皓司

照れてる、照れてる。北川さんって、俺らが出したものを配置するっていうか、選んで微調整して、必要があれば書き足してくれるけど、自分からシリアスなことは持ってくることはなくなってるなって。昨日公演が始まってから、そんなことを思った。誰かをハッとさせたり泣かせたりうるような演技はずっとやってないなって。

野上絹代
野上絹代

『へんしん(仮)』のときは? あのとき、こーじはゴリラをやったりしてたけど、あれはかなり真面目にゴリラじゃなかった?

山崎皓司
山崎皓司

あれはかなり真面目にやってたけど、だけどゴリラだから。お客さんを楽しませるつもりでやってたから、フザケなしで、シリアスにっていうことではなかったと思う。

野上絹代
野上絹代

やっぱり、演出家がひとり立っているわけではなくなったっていうのは、かなり大きいバランスの変化かもしれない。最終的によんちゃんには確認しながら舞台に立ってるけど、基本的に自分たちで自分たちのシーンをディレクションしながらやっていて。そこが難しいところでもあるし、良いところでもあるんだけど。

山崎皓司
山崎皓司

前の体制のときに最後にやったのは何だっけ?

北川陽子
北川陽子

『りんご』だね。

山崎皓司
山崎皓司

『りんご』もネタのオンパレードになってたかな?

加藤和也
加藤和也

どうだろう。シリアスなシーンも結構あったと思うけど。

山崎皓司
山崎皓司

昨日、ゆびちゃん(光瀬指絵さん)が観にきてくれて、「コンテンポラリー出し物大会」って感想を書いてくれてたんだけど、今のメンバーになってからその方向性が強くなったのかなとも思ったんだよね。

野上絹代
野上絹代

今回は「ひとつに物語にまとめない」っていう方向になったから、それが強くなったんじゃない?

北川陽子
北川陽子

そうだね。最後に盛り上がって終わるっていうのは、ちょっともういいかなって。そんな感じかも。観てる人は盛り上がってカタルシスが欲しいのかもしれないけど。

「お客さんに会いたい、お茶したいって気持ちがすごくある」(山崎)

橋本倫史

その話はすごく印象的ですね。今の時代はもう、自宅でNetflixやAmazonプライム・ビデオが見放題で、物語を観ようとしたら延々観てられますよね。

北川陽子
北川陽子

Netflix、大好き。大好き、ほんとに。好きでしょうがない。

山崎皓司
山崎皓司

物語には興味があるんだね?

北川陽子
北川陽子

大好きだよ。でも、Netflixが面白過ぎるし、演劇であれは見せられないから、それはもういいんじゃないかっていう。

橋本倫史

Netflixはいつでもどこでも観れるものですけど、演劇は今この期間にしか観られないものですよね。その意味では、今って時代に影響を受けるものでもあると思いますけど、今という時代に対して、どんなことを感じてますか?

河村美帆香
河村美帆香

宣伝方法に関して言うと、2012年に『りんご』をやってるときと全然変わってないんだけど、反応が圧倒的に少なくて。あの頃はSNSの影響力が超強くて、ひとりが何か言って、それに誰かが反応したら、いろんなところまで広がってたんだけど、今回はチケットが全然動かなくて。こんなに広く繋がってるように見えるのに、ほんとに箱庭みたいで、その外には行けないっていうのが今っていう気がしてる。よんちゃんが少し前にSNSが劣化してるって言ってたけど、「それ!」と思ったんだよね。

野上絹代
野上絹代

それで言うと、SNSも言葉が主体だよね。言葉尻をつかまえて、それに対して言葉で怒ってみたりしてさ。

北川陽子
北川陽子

たしかに、もう、あんまり見ないもんな。皆、嘘ばっかついてるみたいな感じがする。

河村美帆香
河村美帆香

私はちょっと「腹減った」みたいなことをつぶやくこともあるけど――。

野上絹代
野上絹代

もう「うんこ」と言えないもんね(笑)

北川陽子
北川陽子

言えないね。

河村美帆香
河村美帆香

「どういうことですか、うんこって」って言われちゃうもんね。でも、そこを甘く見てたってことは、反省してる。

北川陽子
北川陽子

わかんないな。どうしたら観にきてくれるんだろう。チラシを配っても駄目だし。

山崎皓司
山崎皓司

小さなところでやる。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

自分ひとりでやるんだったらそうするよね。快快でやるんだったらドカンとやればいいと思うけど、自分でやるときは30人ぐらいしか入らない会場で、「これるもんならきてみろ!」ぐらいの気持ちでやる。

野上絹代
野上絹代

変なことをやってても、キャッチーであれば観にきてくれるよね。『再生』のときみたいに、「ほんとに途中で死ぬかもしれません」みたいなことをやればさ、「どういうことですか」ってなるけど、キャッチーじゃないと反応してくれない感じはあるよね。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

皆、そういう気持ちなのかな。最近はイタリアにいるから、あんまりわからないんだけど。

山崎皓司
山崎皓司

でも俺、前よりも「お客さんに会いたい」と思ってるよ。

橋本倫史

「お客さんに会いたい」というと?

山崎皓司
山崎皓司

「もふさんと飲みたい」とか言ってるのもそうなんだけど、お茶したいと思ってる。最近はもう、お金を稼げないのはわかったから、「お金より人に頼ろう」って気持ちになっているのもあるし、単純に興味ある人と話してたら楽しいっていうのもあって。そういう気持ちの変化を挟んで初めての公演だったから、昨日もほんとは客だしのときロビーに行きたかったんだよね。

加藤和也
加藤和也

昔は公演のあとにパーティーをやってたこともあるよね。こーじはスコーン焼いたりしてたけど。

山崎皓司
山崎皓司

そうやってテンションを上げてやるとかじゃなくて、お茶したいんだよね。知らない人といきなり話すのは無理だけど、公演を観てもらって、「これが今の俺のベストです」「俺はこう思ってます」ってことを伝えると、話が早いなっていう。とにかく今、話をしたいっていう気持ちがすごくある。

「何も誤魔化してない感じはあるね。誤魔化す気はない」(北川)

野上絹代
野上絹代

城崎にいたときにさ、「未知のものに出会うことがなくなってきた」みたいなことを話したよね。アップル・ミュージックとかに入って、自分の好きな曲の感じを入力すれば、「こういうのどうですか」って似た系統のものが出てきて、それを聴いたりして。テレビも、つけっぱなしというよりは、好きな番組を録画して観るようになってきて、初めてのものに出会ってビリビリするみたいなことって、あんまりなくなってきたのかなとも思う。劇場ってやっぱり、そういうビリビリがある場所のような気がするけど、そうやって未知のものに出会うことを怖いと感じる人が増えてるのかなと思ったりもした。

河村美帆香
河村美帆香

何で演劇やってるんだろうなと思うもん。

野上絹代
野上絹代

稽古のときに、よんちゃんが「デカダン」って言っててさ。「私の今の気分はデカダン」って言ってて、そのあとで「絶望に変わったわ」と言ってたよね。

北川陽子
北川陽子

絶望までは――まあ行ってるっちゃ行ってるけど――デカダンぐらいかな。絶望したらさ、「演劇なんてできない」とか言い出しそうじゃない? でも、できるから、デカダンぐらい。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

できるよね。

北川陽子
北川陽子

うん。全然できる。

山崎皓司
山崎皓司

演劇はさ、ホームランの確率が高いっていうのはあるのかもね。滅多にホームランは出ないけど、ときどき「わー!」ってなることがあるから。でも、狩猟を始めてから、そんなことも減ってきたけど。

野上絹代
野上絹代

狩猟に比べれば、演劇なんて人間によって決められたことをやってるだけだもんね。狩猟が一番どきどきするこーじにとってはさ、今回の舞台は大丈夫なの?

山崎皓司
山崎皓司

今回の舞台…………。

野上絹代
野上絹代

おい!

北川陽子
北川陽子

不満?!

山崎皓司
山崎皓司

いや、不満とかじゃなくて。お客さんに、自分が狩猟をしているときに感じるどきどきをあげられたらいいんだけど、演劇と狩猟は違うから。だから、自分が演劇を観たときに時々感じる「わー!」っていう感覚をお客さんに感じてもらえたらいいんだけど。

野上絹代
野上絹代

でも、『りんご』のときを振り返ってみると、あの頃よりも皆のマンパワーがすごい上がった気がする。「これしかやらないぞ!」じゃないけど、「快快ではこれをやるんだ!」っていう強い気持ちがあらわれてきた気がする。『りんご』のときは、もうちょっと演技をしたりしてたから。

山崎皓司
山崎皓司

あの頃は、まだ売れる気があったから。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

そうだね。たしかにあの頃は「もうちょっとどうにか」って気持ちがあったけど、今はないね。

山崎皓司
山崎皓司

だから、今回はマジで、舞台に立てるかどうか不安だったんだよね。「俺、やりたいことあるかな?」とか「言いたいことあるかな?」って。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

こーじ、さっきからめちゃくちゃ言いたいこと言ってるじゃん(笑)

山崎皓司
山崎皓司

そうだね。前にあやみさんに話したんだけど、ほんとは俺、講演会のほうがやりたいのかもしれない。話したいことがいっぱいある。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

じゃあ、一回やろうか。山崎の講演会。

藤谷香子
藤谷香子

でも、こーじは講演会をやっても、結局はしごを登りだしたりしそうだね。

山崎皓司
山崎皓司

結局そうなっちゃうのかもしれないけどね。「しゃべることねえや」って。だからお茶をするぐらいがちょうどいいんだよ。売れたいっていうモチベーションがなくなると、何のために表現をするのか――。まあ、だからこそ純粋であると思うけど。

北川陽子
北川陽子

何も誤魔化してない感じはあるね。誤魔化す気はない。

「私はもう、未来の中でしか生きてないなと思う」(野上)

橋本倫史

今回の『ルイ・ルイ』もそうですけど、快快の作品の中では未来ってキーワードが出てくることが多いなと思うんですよね。今、「未来」って言葉から皆がどんなことを思い浮かべるのか、聞かせてもらえますか?

山崎皓司
山崎皓司

今回、俺は「NO! FUTURE!」とか言うんだけど、未来のことを考えると不安になるっていうのがあって。「病気になったらどうしよう」とか「お金がなくてヤバい」とか考えだすと、ヤバさがヤバいから。でも、そんなに破天荒な生活をしてるわけじゃないから、お肉を獲るとか野菜を作っていくとかすれば、そんなにお金がなくてもやっていけるかもとおも思うんだよね。未来を想像し過ぎると不安になるから、今楽しいことをやってほうがいいんじゃないか――っていうのが俺の今の、一番の未来。

橋本倫史

狩猟で罠をしかけるのも、いつか動物がひっかかることを想像することだし、植物の種を撒くのも実が成るときのことを想像することだし、それも未来といえば未来ですね。

山崎皓司
山崎皓司

でも、スパンが短いと思う。基本的に1年って期間の中のことで、それ以上のスパンでは考えてないから、「1年ぐらい許してもらえませんか」って考えてる。

北川陽子
北川陽子

私も、未来のことは全然考えてないかもしれない。何だろう。未来は、みる。みるって感じかな。未来はみるもの。肯定されるような光をみようとするみたいな感じですかね。むりに、むりくりみようとする。

加藤和也
加藤和也

こどもが生まれた人が増えたっていうのもあるよね。自分が思う未来って、自分を中心とした道があって、その周りに環境があるみたいな感じだったのが、こどもがいるってなるともう一個線路ができて、「ここにも道があったのか」って見てる感じがある。

野上絹代
野上絹代

ヤバいよ。小学校に入ると、一気に自分のスケジュールも押さえられてる感じがあるからね。

橋本倫史

スケジュール?

野上絹代
野上絹代

たとえば「引っ越しをしよう」とか、何かを変えることを考えようとすると、「娘が中学校に上がるタイミングのほうがいいな」とか、「でも、そのとき息子は何歳か、ああやっぱりタイミングが悪いな」とか、そういうことで考えるようになって。私はもう、未来の中でしか生きてないなと思う。今のことに集中できるのは贅沢な時間って感じで、こどもたちを寝かせて、夫と一緒にHuluを観る1時間だとか、自分の仕事をするときにぎゅっと集中するとか、それくらいのもので。もう、全然未来だよ。今日もここにくる前に、今日の夕飯を作って、明日の夕飯の仕込みもやってきてるから、もう、未来・未来・未来・未来……。未来の中でしか生きられなくて、こどもがすごい遊びたがってるときに、「ごめん、今ちょっと忙しいから」ってなってるときは、自分は何をやってるのかなと思ったりするけど。

加藤和也
加藤和也

でも、そう考えると、舞台を作れる時間はいいものだなと思う。

野上絹代
野上絹代

だから、快快の皆と関われることが、自分にとって良い栄養になっているなってところはある。自分は演劇を仕事にしていくと思うんだけど、快快で何かを作ってるときは、「仕事をしてる」って感覚はそんなになくて。皆の話を聞いてると、未来に追われる作業をしているなかで、自分がほんとに考えていることは何だろうってことを思い起こすんだよね。だから、今後もそれは続けていきたいなと思うけど。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

私は最近、今が過去になるってことをすごく意識してる。今って時間は、何百年後から見るとすごく昔だし、どんどん今が過去になっていくんだなっていう。こどもが生まれたときもそれを思った。初めて病院を出て、エウジーとアイスクリームを食べに行ったとき、生まれたばかりの朝が乗っていて、この景色を何年後かに思い出すことを想像したら、いつのまにか何年後の自分になって号泣する――そういう、おかしい感じになってる。今回の『ルイ・ルイ』も、そういう感じがあって。リハのときに、劇場が薄暗かったというのもあるけど、「私は皆とリハをしていたときのことを思い出しているだけなのでは」みたいな気持ちになったの。

北川陽子
北川陽子

えー! 怖いー!

大道寺梨乃
大道寺梨乃

普段は皆と離れて暮らしてるからだと思うけど、最近はそういう気持ちになりやすい。日本に戻ってきて演劇をやれることって、普段は非現実だから、そういう感じがするんだと思う。

「できないよ、こんな遊び。楽しくてしょうがない」(大道寺)

大道寺梨乃
大道寺梨乃

でも、今の時代ってことで言うと、「怖い」ってことが現実のすぐ隣にある感じっていうのは、すごく今っぽい感じもする。よんちゃんがさ、観にきた人に「よかったー!」ってなるんじゃなくて、もっと傷をつけたいみたいなことを言ってたじゃん。身近なところで起きちゃう事件や災害もそうだけど、自分が危ない目に遭うかもしれないってことが前よりちょっとリアルになっている気がする。そういうことが、私たちのやっていることにもちょっと出てるのかもしれないなと思う。

山崎皓司
山崎皓司

それで言うと、俺は今回、心が折れそうになってたんだよね。演劇を作るのってこんなにつらいのか、こんなにつらいんですか、もうできません、何のためにやるのかもわかりませんみたいになってたときに、『ウィーアーリトルゾンビーズ』が8月31日に1日だけ無料公開されて。そのときの長久允監督のコメントを読んだときに、「うわー!」って、「長久さん、そうですよね!」って勇気づけられたんだよね。傷をつけるじゃないけど、せっかく表現してんだから、観てくれた人に何か残したいなって思えた。

藤谷香子
藤谷香子

前に比べると、ユーモアに対する信頼が強くなってる感じがあって。もともとあったけど、個人的には、その信頼が揺るぎのないものになってきた感じはある。

北川陽子
北川陽子

『りんご』の頃にもあったけど、ここ1、2年でまたギリギリな感じになってきてるから、それが強くなってきたかもね。あやみちゃんも引っ越すし、山崎も引っ越すし、次いつやるかわかんないんで、皆観にきてほしい。

佐々木文美
佐々木文美

もうやれないかもしれないなって危険性はあるよね。ここが一番好きだから、また3年後か5年後にKAATでやれたらいいんだけど。

北川陽子
北川陽子

どうしてもやってほしいのであれば、今回きてもらえないと、ちょっと、ねえ。

佐々木文美
佐々木文美

今日はずっとチケットの話をしてる(笑)

山崎皓司
山崎皓司

それでしか報われないからね。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

でも、場当たりをやってるとき、すごく楽しくて、「ずっとこれをやってたいな」って思ったんだよね。楽しいじゃん、あかりや音を合わせて作っていくの。あの時間に、ふと、自分がすごくお金持ちみたいな気持ちになったんだよね。こんなにお金をかけて、皆さんを迎える準備をして、あかりや音楽などもつけてもらって、なんて楽しいのかしら、って。チケットは売るけど、お客さんが入らなかったとしても、ひとり30万ぐらいの出費で済むんだとすれば、30万でこんなに楽しいことができるならお安いものだわって。

山崎皓司
山崎皓司

すげーいいね、それ。たしかにそうだわ

藤谷香子
藤谷香子

うん。それは誰もができることじゃないからね。

大道寺梨乃
大道寺梨乃

できないよ、こんな遊び。楽しくてしょうがない。「こんなに楽しい催し物があって、会費3800円で参加可能だなんて、お安いわ!」って思うから、皆に観にきてもらえたらなと思ってる。

橋本倫史

橋本倫史

1982年東広島市生まれ。ライター。構成・ドキュメント担当。著書に『ドライブイン探訪』(筑摩書房)『市場界隈 那覇市第一牧志公設市場界隈の人々』(本の雑誌社)。 twitter@hstm1982

快快 アニー

快快 -FAIFAI-

2008 年結成。東京を中心に活動する劇団。変化し続けるメディア、アートの最前線にアクセスしつつ「演劇」をアップデートし、社会性とポップで柔らかなユーモアを併せ持つメッセージで幅広い支持を得る。2009 年よりアジア、EU にも活動の場を広げ、2010 年9 月代表作『My name is I LOVE YOU』でスイスのチューリヒ・シアター・スペクタクルにてアジア人初の最優秀賞、「ZKB Patronage Prize 2010」を受賞。国際的にも注目されている。主な作品は『My name is I LOVE YOU』(2009)、『Y 時のはなし』(2010)、『SHIBAHAMA』(2010)、『アントン・猫・クリ』(2012)。『りんご』(2012)が第57 回岸田國士戯曲賞候補となる。『6 畳間ソーキュート社会』(2013)、『へんしん(仮)』(2014)、ハイバイ岩井秀人氏を演出に迎えた『再生』(2015)は2,000 名を超える動員を記録。ホテルのスイートルームで上演した『CATFISH』(2017)も話題を呼んだ。ツアー型演劇「ウェルカムチキュージン」(2017)や、フェスティバル/トーキョーまちなかパフォーマンスシリーズ『GORILLA ~人間とは何か~』など劇場を飛び出したパフォーマンスにも定評がある。

主なメンバー 北川陽子(脚本家/演出家)、山崎皓司(俳優)、野上絹代(俳優/振付家/演出家)、大道寺梨乃(俳優)、佐々木文美(舞台美術家)、藤谷香子(衣装)、加藤和也(写真/Web)、河村美帆香(制作)

公演概要

快快『ルイ・ルイ』
FAIFAI “Louie Louie”

2019年9月8日(日)〜9月15日(日)
KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

演出:快快
脚本:北川陽子
出演:大道寺梨乃,野上絹代,山崎皓司,石倉来輝,白波多カミン,初音映莉子,ルイ(ぬいぐるみ)
特別出演:毒蝮三太夫(声)
ぬいぐるみ制作:片岡メリヤス

公演日程

8日(日) 19:30★
9日(月) 19:30★
10日(火) 19:30★
11日(水) 14:00★◇ / 19:30★◇
12日(木) 19:30
13日(金) 19:30
14日(土) 14:00♡ / 19:30
15日(日) 14:00
計10回
★早割対象回

♡託児サービスあり(要予約・有料 0-1才まで1,000円、2才以上500円・先着順)
 問い合わせ:イベント託児・マザーズ 0120-788-222
 (月〜金10:00-12:00、13:00-17:00)
◇映像収録あり

料金(税込)

  • 一般 3,800円
    一般早割 3,500円(当日料金はプラス500円)
  • U24 3,500円 U24早割 3,300円(観劇時24歳以下対象、要身分証明書、前売りのみ)
  • 高校生以下無料(枚数限定、要身分証明書、劇団HPより要予約)
    →ご希望の方はメール件名を「ルイルイ高校生以下予約」としご希望日時と人数を明記の上、info@faifai.tv までにご連絡ください。

全席自由席・整理番号付
受付開始は開演の60分前、開場は30分前です。
未就学児童のご入場はご遠慮ください。
車椅子でのご来場は事前に快快(info@faifai.tv)へご連絡ください。

クレジット

舞台監督:藤田有紀彦(KAAT)
照明:中山奈美
音響:星野大輔
舞台美術:佐々木文美
衣装:藤谷香子
振付:野上絹代
映像・記録:加藤和也 河合宏樹
制作:河村美帆香 横井貴子 小原光洋 細井優花

宣伝美術:いすたえこ
宣伝写真:岩澤高雄(The VOICE)
宣伝ヘアメイク:山口恵理子
宣伝衣装:overlace
PHABLIC×KAZUI
Little Trip to Heaven

企画制作・主催:快快
提携:KAAT神奈川芸術劇場
助成:芸術文化振興基金

協力:城崎国際アートセンター(豊岡市),急な坂スタジオ,公益財団法人セゾン文化財団,株式会社まむしプロダクション,株式会社エー・チーム,ままごと,有限会社サウンドウィーズ