what’s 「Y時のはなし」
せつない夏休みの一幕を子供の夢を織り交ぜながら描いた本作は2007年9月、快快の前身である“小指値”が『横浜シリーズ』と題して行った公演の中の1演目「R時のはなし」として上演。人形を取り入れた大胆な演出法が大反響を呼んだ。
2010年3月には長編「Y時のはなし」としてリマスター上演。新たなアイデアも加わりパワーアップした本作は2010年5月に山口・シンガポールでのツアー、11月の京都公演も成功させている。
2012年には、アーティスト・イン・児童館の企画として、
練馬区内の児童館の子どもたちや中高生とともに、演劇作品《Y時のはなし》を制作・公演するプロジェクトも行う。
あらすじ
小学校に併設された学童保育。そこに嬉々として通う小学生の“ようじ”。夏休みの学童では、友達がみんな帰ってからお迎えがく るまでのあいだ“学童のお兄さん”と二人だけで遊ぶ時間がようじにとっては特別な“Y時”。しかし、夏休みも終わりに近づいた頃、ようじは突然打ち明け る。
「おれ、明日転校するんだ。」
子供の発想から生まれた演出法
本作の舞台である学童保育は演出家である篠田千明の以前の職場でもあった。本作の演出コンセプトはそこで遊ぶ子供たちから発想を得たものだ。おままごとの中で子供たちは人形を使い、けれども単純な人形劇ではなく、あくまで本人達が人形と二重になって役を演じ、人形×人形、人間×人形、人間×人間と混在して物語を進めて行く。
彼らが遊びの中で生み出す世界とその独特なルールが演劇からより自由になるためのきっかけを本作に与えた。
快快初のオリジナル音源
リマスターされた本作は新たにミュージシャンの蓮沼執太を音楽に迎え、全編オリジナル楽曲で上演した。子どもの頃に一度は夢見たスペクタクルと夏の終わりの切なさが鮮やかに交差する世界観を音楽面からも見事に盛り上げている。
舞台はおもちゃ箱
学童保育が物語りの舞台である本作は遊び心の詰まった小道具がたくさん。ジュースの出る蛇口に綿菓子の雲など子供の頃に誰もが考えた「こうだったらいいのにな」という憧れが現実になって登場する。
リマスター上演時には小学生以下の子供を対象に料金無料日を設定し、上演前に小道具制作ワークショップの実施・作成された小道具を上演時に実際に使用するなど教育としての演劇にも一役買っている。
「Y時のはなし」は子供に対する尊敬とエール
(演出家コメントより抜粋)
子供達は自分たちの世界だけで遊んでいるようで、実は大人の世界を充分わかっています。いわゆる大人の都合、に子供はつきあわなくてはいけないかわりに、彼らが遊びの中で生み出す世界は彼らのルールによって守られています。 幸福で、都合がよくて、弱肉強食で、終わる事のない夢の世界。
でも子供の頃よりも年を取るごとに私はどんどん楽しくなっていきます。現実はハードだけれども、それでも今の方が楽しい。彼らに対する尊敬とがんばれよ!という意味を込めてこの作品を作りました。
ぴーす、篠田千明